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Day.42-2002.08.24 Day.41へもどる
 午前中をエアーズロックで過ごしたこの日。まずは日の出を見るため、6時に起床してエアーズ・ロックへ向けて出発した。前日とは違い、岩から1km程の所まで近づいて朝日が昇る様子を見るのだが、私達が到着したその時間、まだあたりは暗いというのに既に車がたくさん停まっていた。サンセットを見に来ていた人はそれ程多くなかったので、人の多さに少し驚いた。

 
 私達は、朝食を摂りながら次第に明けていく空とウルルを見ていた。駐車場はなく、どの車も路肩に寄せて駐車している。私達のバスの前には少し背の高いキャンピングカーが止まっていて、しかもみんな車の上に乗っているためにいささか視界がよろしくない。私達も、とバスの上に登ろうとしたが、当然アールの許可が出るはずもなく、結局みんな背伸びをしながらの鑑賞となった。

多くの人が、ここで朝日を待っている


 日の出のウルルも美しかった。日没とは逆に、色のなかった岩肌に次第に赤みが差していくのだ。個人的には日没の方が美しいと思ったが、どちらも見て良かったと思えるものだった。



 私達は再びバスに乗り、ほどなく下車。そこはウルルのまわりを囲むウォーキングコースだった。この道に沿ってウルルに向かい、岩に登りたい人は登岩を、登らない人はそのままウォーキングコースに進む。


 ウルルに向かって歩きながら、私達3人はある1つの答えを出すべく、人知れず葛藤の最中にいた。といっても、“ラウンドの計画”とか“仲直りの方法”について考え込んでいた訳ではない。ちなみにこれらの課題については、大きな自然に触れたおかげか、問題は色々あるものの何となく解決しそうな様相を見せ始めていた。


 私達が考え悩み、未だ結論に至らないこと−


−ウルルに登るべきか否か、であった。



 アボリジニの人々は、訪問者に対し“ウルルに登らないで”と訴え続けている。 
 ウルルは、アボリジニの人々にとっての聖地である。神聖な場所に旅行者が踏み入り、写真を撮影したり落書きをしたりするのは、彼らにとって耐え難いことに違いない。
 
 ウルルの偉大な姿は多くの人を惹き付け、オーストラリアを代表する有名な岩になった。訪れる人々はウルルに圧倒され、ここがアボリジニの人々にとって神聖な場所であることを理解する。
 しかし同時に、私達旅行者は“経験”を重視する。“せっかくここまで来たのだから、この有名で巨大な岩に登ってみたい。頂上からの景色を見てみたい。”この気持ちを抑えることはできない。そして、この“観光名所”によってアボリジニの人々が恩恵を受けていることも事実なのだ。




 私達は悩んだ。この先の人生で再びウルルを訪れるかと言われたら、きっとその答えは“ノー”だろう。
 実をいうと猛だけは、2回目のウルルだった。彼は学生の時、旅行でオーストラリアに来たことがあり、その時にこの“ウルル登岩”が日程に組み込まれていたのだそうだ。

 そう、つまりそういうことなのだ。

 私達も、登ることが前提の日程であったらこんなに悩む必要もないのだった。“一生に一度の経験”として、何の迷いもなく登ったであろう。しかし、、、であった。


 悩みながら登頂口に到着した私達に、思いがけない“風”が吹いていた。



 【強風のため、登岩禁止】


 
 
 ツアー参加者の中で登岩することを決めていた人からは、落胆の声が聞こえた。しかし私達は、正直ホッとしていた。


 これで、悩まなくてすむ。

お昼近く、登岩が解禁となった。
見るからに険しく、滑りそうな斜面である。



 ウルルへの登岩は、天候によって禁止されることがあるのだ。私達が歩いている地上の風はそれ程強くなかったが、頂上に行くと風はかなり強いそうだ。

 数年前に登った猛によると、設置されているロープにつかまって歩かないと、かなり怖い思いをするのだという。彼が参加したツアーにはご婦人が多かったそうだが、その中の1人の方が自力では降りられなくなってしまい、彼が背中におぶって岩を降りたのだそうだ。高い所があまり得意ではない猛、他の2人には決して言わなかったが、きっと登れなくて良かったと思っていたに違いない(?)



 約2時間かけて、私達はウルルの周りを歩いた。歩いてみると、その巨大さを更に実感する。岩に残る数多くの亀裂が、この岩の成り立ちを物語っていた。

 エアーズロックは、“縦になった岩”である。何万年も前に、雨で流された石や砂が何層も重なって巨大な岩ができた。そして、プレートが動いたことによる圧力で、その岩が縦になり現在の形になったのだという。そしてその証拠に、通常であれば岩や砂の堆積された年月を物語るはずの横縞が縦に入っているのだ。

 その縦じまは、私達に大地のうねりを怖いほど実感させた。

 また、岩のあちこちには壁画も残されていた。神聖化されたのはいつごろのことかはよくわからないが、ひょっとしたらこの絵は、ウルルが単なる巨大岩としてしか見られていなかった頃、狩の講習に描かれたものかも知れない。生活上必要な習慣であるとはいえ、神聖なものに絵を描くのは何となく恐れ多い気がするから。

 

 ぐるっと歩いて駐車場に戻ってきた私達は、少し休憩した後で“アボリジニカルチャーセンター(Aboriginal Culture Centre)”に向かった。ここではアボリジニの人々の厳しい掟や習慣、文化などを知ることができる。“使う機会がないうちに失くしてしまうから”という理由で、いわゆる“ポストカード”というものをめったに買わない保正家だが、ウルルやカタ・ジュタの魅力には勝てず、何枚かカードをお買い上げ。これらのカードは、後日しっかりと有効利用されたのである。


恒例の薪集め 


 ウルル−カタ・ジュタ国立公園を後にした後、私達のバスはキングス・キャニオン(Kings Canyon)へ向けて移動した。翌日訪れることになっていたキングス・キャニオンだが、その壮大な全景を見ることのできるヘリコプター遊覧が、オプションとして提案された。


 前回バングル・バングルでヘリコプターに乗らなかったことを後悔していた3人組。今回は7分間30ドルという料金をものともせず、参加することにした。

 一度に乗れるのは3人まで。私達は順番を待ちながら、空高く飛んでいくヘリコプターを見ていた。地上から見ていると、“7分間”は意外に長いように感じた。ヘリコプターがゆったりと舞い上がる空を見上げながら、3人は期待と緊張でワクワクしていた。

 いよいよ私達の順番。ヘリコプターに向かった私達の背後から、アールが操縦士のお兄さんに叫ぶ声が聞こえた。

 
“Doors off!!!”(ドアをはずせよ!)


 “え?  えーーーーーーっ??”



ヘリコプターに向かっていた足が止まった。

・・・西部警察じゃないんだから、ドアをはずす必要は全くありません。射撃の予定も、ロープを垂らして誰かを引き上げる予定もありませんけど?


私達の動揺をよそに、アールはニコニコしている。どうやら彼的には、“特別サービス”のつもりだったらしい。


“ドアがはずされ、準備万端”のヘリコプター”


恐る恐る乗り込んだ私達。そして、ヘリコプターは静かに離陸した。

 空の上から、前日訪れたカタ・ジュタ(オルガズ)やウルル(エアーズロック)が見えた。そして、巨大な巨大な、キングス・キャニオンの姿。素晴らしい!と心から感じた。


多くの人が、ここで朝日を待っている


とその時、ヘリコプターが突然前に傾いた。続いて右に左に。


“ギャーーーーッ”


ドアがないので、足元には素晴らしい景色が“直接”広がっている。勿論シートベルトはしているけれど、スピードもそんなには出ていないけど、いや、スピードが出ていないからこそ、怖いこともあるのだ。“ヘリコプター初体験”だった菜津子、ここから先の景色は断片的にしか覚えていない。それはそうだろう。大サービス中の間中、乗り物酔いと戦いながら目をぎゅっと閉じる羽目になったのだから。

 アールと操縦士のお兄さんの演出のおかげで、私達の7分間はあっという間に過ぎていった。




 夕方、私達はキャンプ地に到着した。空き地に荷物を下ろす。と、アールが言った。

 “今日はここでスワッグを使って眠るけど、トイレは向こうにあるからね”

 ブッシュキャンプでありながら、完全なブッシュキャンプではなかったのだ。でも、私達は満足だった。キャンプファイヤーを使って食事の支度をし、みんなで火を囲んで時を過ごす。小さなツアーだからこそできる、貴重な体験だ。

 
 夜も遅くなってから、私達はスワッグに潜り込んだ。見上げると、そこには明るい明るい夜空が広がっていた。この時期は満月だったのだ。月明かりで空は照らされ、星の輝きは目立たない。そうか、前回は新月の時期だったのだと改めて気付いた。

スワッグに潜り込み、満足そうな二人


 この夜、満天の星に囲まれることのなかった私達は、遠くに聞こえるディンゴの声を子守唄に眠りに付いたのであった。
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