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Day.41-2002.08.23 Day.40へもどる
 本日の集合は朝5時20分。バッパーに隣接している建物にツアーの受付デスクがあり、私達はそこで書類の記入などを行なった。同意書のほかに、注意事項例えば、ベジタリアン用の食事指定などの要望も申し出ることができる。私達はここで、ツアー変更に伴う追加料金を一人当たり5ドル(当時約350円)支払った。

 追加料金を支払った事により、心の片隅にあった心配はめでたく解消された。つまり、ツアーはきちんと変更されていたのだ。しかし私達、ここで更に"ブッシュキャンプが含まれるツアーですよね?"と念押し。別に信用していないわけではないのだが、万が一、ということがあるので。

 希望通りのツアーに参加できることを再確認し、ここでようやく安心した3人。しかしこの朝この場で、ブッシュキャンプありのツアーであると知り、"そんなことはできない!"と、テント付きのツアーに変更している人もいた。好みは色々である。


 バスに乗り込んでいよいよ出発。今回は総勢9人の小さなグループ。ガイドさんは"アール(Earl)"という名前の若い男性だった。ゆっくり話してくれるし、誠実そうな感じがする。私達の中では、"ゆっくり話してくれる"ことが、"良いガイドさん"かどうかを判断する大きなポイントになっていた。


 最初に訪れたのはレインボー・バレー(Rainbow Valley)。アリス・スプリングスから約75km南に下ったところに位置する。ここはジェイムス山脈(James Range)の一画なのだが、早朝と夕方の眺めが素晴らしいことで知られている。

 私達が到着したのは朝6時過ぎ。辺りの空気は冷え切っていて、日本の冬の早朝を思わせる。
 ツアーのパンフレットに載っていた写真では、レインボー・バレーが水面に映り、逆さ富士を思わせる美しさを漂わせていた。しかし残念ながら乾季のこの時期、水に映る姿を見ることは叶わなかった。ただ、朝日と共に次々と色を変える山の姿、特に日が登りきる直前は本当に美しかった。

レインボー・バレーの夜明け。
“一日の始まり”をこれ以上ないほど印象付ける力強さだ


 ザ・オルガズに到着したのはお昼前。バスが近づいていくにつれ、その独特な姿は私達の目を釘付けにした。その遠景は"モコモコ"という言葉がぴったりだ。

 ザ・オルガズ(The Olgas)は、アボリジニの言葉で"たくさんの頭"を意味する"Kata Tjuta(カタ・ジュタ)”に付けられた英語名である。先住民アボリジニの人々にとって、Kata TjutaとUluru(ウルル:エアーズロック)は、偉大なる信仰の対象だ。そしてこの地域一体は、ウルル-カタ・ジュタ国立公園(Uluru-Katajuta National Park)に属し、文化及び自然世界遺産に指定されている。

 ちなみに英語名“オルガズ”は、1870年代に白人探険家として初めてここを発見した人物が、当時ウェルデンベルグ(現ドイツ南西部)を統治していた女王“オルガ大公妃(Grand Duchess Olga)”の名にちなんで付けたものであると言われている。

立ち寄った休憩ポイントにいたラクダ。
ノーザン・テリトリーは意外にもラクダの輸出が盛んなのだ


ラクダと同じ所にいた馬。放し飼い?


 バスを降りた私達は、ウォーキングに備え昼食を摂った。その後いよいよ、あの有名な“風の谷 (The Valley of Wind) ”に向けて歩き始めたのだ。

 私達が目指した“風の谷”。そう、あの宮崎駿監督による名作『風の谷のナウシカ』で、主人公が生まれ育った国のモデルとなったと言われている、あの“風の谷”である。


 私達のグループ以外にも、多くの人が風の谷に向けて歩いていた。歩いている人はほとんどがツアーに参加中のようで、中には日本人ガイドさん率いる日本人グループの姿もあった。
 歩いている間も、アールは色々解説してくれていたのだが、私達の耳はどうしても日本語をより簡単に捉え(当然だが)、アールが説明するカタ・ジュタの成り立ちよりも、“必ず私について歩いて下さいねー。皆さん大丈夫ですか〜?”という声に反応してしまうのだった。
 
 岩でゴツゴツした道をひたすら前に進む。多くの旅人をひきつけるカタ・ジュタであるが、遊歩道を外れてしまうと安全に戻れる保証がないという、危険な側面を持ち合わせている。特にこのウルル-カタ・ジュタ国立公園一体は、気温の上昇が激しいことで知られており、例えば午後の暑い時間に十分な量のお水を持たずに迷ってしまうと、命取りになりかねない。そういった理由から、この地域一体の気温が36度を超えるとの予報が出された場合、風の谷へのウォーキングは禁止されている。


“頭がたくさん”のカタ・ジュタ。
頭を突き合わせて、何かを話し合っているようにも見える。


 やがて、私達は“風の谷”に到着した。岩と岩の間から姿を見せるその姿に、皆言葉を失った。

 目の前に広がる谷は、とても穏やかに見えた。静かに、そこに存在していた。指定の展望地(Lookout)から見ることしかできないので、実際の谷間では少し距離がある。そのため、風が強く吹いているのか止まっているのかがわかりにくい。そしてそれが、風の谷を神秘的にしていた。

 この谷に、風を操る人々が暮らしていた−そんな話を信じたくなるよう光景だった。


風の谷


 オーストラリアを代表する名所であるので、このカタ・ジュタとウルル(エアーズロック)は比較されることが多い。知名度ではエアーズロックの方が断然上であろうし、勿論どちらも素晴らしい自然の姿だ。ただ私達は個人的に、カタ・ジュタの方に強く惹かれた。


 
 後ろ髪を引かれるような思いでカタ・ジュタを後にした私達は、日没を迎えるウルルに向かった。


 “オーストラリアと聞いて連想するものは?”と問われたら、きっと半分以上の人が名前を挙げるのではないかと思われるウルル(エアーズロック)だが、その巨大な岩が赤く染まる夕暮れの姿はあまりにも有名だ。実は私達、この“赤いエアーズロック”にあまり大きな期待を持っていなかった。写真でも見たことがあるし、有名すぎて何となく感動が沸かないのではないかという気がしていたのだった。


 
 バスが駐車場に到着し、私達はウルルを目の前に見ていた。大きい。サンセット(日没)ウルルを眺めるための展望ポイントなので、直線距離で3KM程は離れていただろうか。それでも、アボリジニの人々が崇拝するその岩は、圧倒的な存在感を漂わせていた。


 その時、両手にビンを抱えたアールがニコニコしながら私達の方に歩いてきた。彼が抱えていたのは、シャンパン(正確にはスパークリング・ワインだけど)。どうやら“日没時のウルルを見ながら乾杯”という趣向のようだ。しかし、たった9人しかいないツアーにボトル4本って・・・。

 アールが準備してくれたテーブルを囲み、まずは乾杯。紙コップでの乾杯だけど、雰囲気は十分。それから、クラッカーをつまみながら刻々と色の変わるウルルを堪能した。

 この時間帯のウルルは、“赤く染まる”とか“燃える”といった言葉で表現されることが多い。もともと赤茶けた岩肌に日が当たってその赤さが強調されるからだ。日がまだ高めなうちはどちらかというとオレンジに近いが、日が完全に沈みかけ最後の光を放つ頃、ウルルはその色彩を一気に変える。

 そして、、、最後に強烈な真紅色を放ち、ウルルはまるで燃え尽きたかのようにその色を失った。

日没直前のウルル。荒々しく美しい。


 その間およそ30分ほど。当初の予想に反し、私達は夕暮れ時のウルルの虜になってしまっていた。


 完全に日が暮れ、私達は夢から醒めたようにみんなでおしゃべりを始めた。今日はここでこのまま夕食を摂ることになっていた。暗い空に黒くそびえるウルル。そしてその上にぽっかりと浮く月。これまた幻想的な雰囲気の中、ほろ酔い気分で過ごす時間は楽しかった。


 キヨ君が“千鳥足のお手本”のような足取りで歩いていることに気付いたのは、キャンプ地に到着してからだった。更に、パンパンに張ったお腹と意味不明なニコニコ顔。

 “口当たりが良いからといって、勧められるまま空腹時にシャンパンを飲みすぎるとこうなりますよ。食べすぎもよくありません”と指導する教科書にでも出てきそうな、キヨ君の姿だった。

 キャンプファイヤーを囲んで食後のひとときを楽しむ私達の後ろで、キヨ君は1人スワッグに潜り込み、幸せと苦しみが不定期に襲う睡眠時間に突入していた。
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